昭和初期の出版界は左翼本の洪水

近衛文麿 野望と挫折』林千勝

 昭和初期の出版界は左翼本の洪水であり、共産党が合法化された戦後の比ではなかったといわれています。どこの書店にもマルクス資本論マルクス・エンゲルス全集、レーニン選集、スターリン全集があったといいます。
 政府の検閲方針もあまり無茶をせず、天皇制否定と暴力革命支持扇動に該当するか否かの判定も慎重におこなわれました。
 日本共産党の壊滅にもかかわらず、共産党関係の非合法出版物を扱う専門書店があって、いくら禁止しても刊行されていたようです。非合法出版物は特定の読者層ができていて五千部位はすぐに売れてしまうので、残本を押収され罰金を払ってもまだ儲かるという笑えない話もあったほどです。
 マルキシズムが一世を風靡していたのです。
 帝国大学等を中心にアカデミズムにおけるマルキシズムの席巻は推して知るべしの状態でした。学内社会主義運動は全国の高等教育機関で展開され、学生は大量に赤化していったのです。そんな世の風潮のなかでも、風見主筆信濃毎日新聞は突出していました。(p58)