動物観の違い

『日本人はなぜ日本を愛せないのか』鈴木孝夫

 フランスを訪れる多くの日本人から、よく「どうしてフランスの犬はあんなに行儀がいいのですか、家の中でやかましく吠えることもなく、まるで犬の種類が違うみたいで、一体どんな躾、育て方をしているのでしょうか」と聞かれるというのです。
 松原氏の説明は私の想像もしなかった驚くべきものでした。フランスでは子犬が成長する過程で、人に決して迷惑をかけないよう、主人の言うことには絶対に従うようにと躾るが、どうしても言うことをきかない呑み込みの悪い犬は、どんどん淘汰する、つまり殺してしまうというのです。その結果、飼われている犬は行儀のいい、言うことをきく犬だけが残っているのですと。
 これを聞いて日本の愛犬家はどんな顔をするでしょうか。文化芸術の国、博愛人権思想の先進国でもあるフランスで、まさかこんなひどいことをするなんて信じられないといった反応が、私には目に見えるようです。
 日本ではマンションの部屋で一日中うるさく啼く犬や、通行人に向かって垣根越しに吠えつく犬など珍しくもありませんね。フランスでは、こんな癖の悪い犬は、すぐ隣の人や通行人が警察に通報して、処置して貰うそうです。
 イギリスでも事情はほとんど同じなんですよ。イギリス人は犬に限らず家畜とは、そもそも人間に何かしらの利益便宜を提供するために飼っているものなのだから、間違っても人間に迷惑をかけるようなことがあってはならないものと考えています。だから主人を困らせたりてこずらせるようなことは、犬には絶対にさせない許さないのが鉄則です。
 したがって日本の多くの家庭に見られるように、飼い主の方が、言うことをきかない犬の機嫌をとって、おろおろするなんて考えられないことなのです。「犬が悪さをしたら、(竈の上で大切な)スープが吹きこぼれるのもかまわず、即座にこっぴどく叱れ」という言い方がイギリスにあるくらいですから。