失敗研究

『新逆転の発想』糸川英夫

 組織工学の理論の一つに、フェイリア・スタディ(失敗研究)というのがある。
 独創的なアイデアというのは、毎日考えていても、なかなか浮かんでくるものではない。しかし他人が失敗した話を聞いて、それをひっくり返すと、非常にユニークなアイデアがたいてい出てくる。
 私は、学校を出て飛行機の製造会社に入ったが、ここで、会社ができてから私が入社するまでに先輩がやった失敗の記録を全部集めた。
 成功の記録を聞くと失敗の記録もいっしょに出てくる。人間というのは、失敗談はなかなか話してくれない。初めから失敗談というのは失礼な話なので、とりあえずは、成功談を聞きに行く。しかし、二時間か三時間話すと、成功談は尽きてしまい。「そうはいうものの、おれにもいろいろ失敗があった」というのが、最後にちょっと出てくる。それをもっぱら集めたわけである。
 後に、私は非常にユニークだといわれた隼戦闘機を設計したが、これも一人の先輩が一生を棒に振った失敗を知っていたために出たアイデアであり、成功談ばかり聞いていては出てこなかったと思う。
 うまいことに、人の失敗は痛くもかゆくもない。自分の失敗を参考にしていたのでは、成功に結びつく前に、もうやらせてもらえなくなってしまう。