庶民の力量

『「日本」をめぐって』網野善彦

小熊 実際に、網野さんが「新しい歴史教科書をつくる会」についてのインタビューにお答えになられているものを読みますと、西尾幹二さんなどのほうが「自虐史観」だと述べておられます(『リアル国家論』)教育史料出版会)。彼らの言うよりも、もっと江戸時代の人びとの識字率とか、女性の経済能力とか、そういったものは高かったのであると。それを知らないから、明治国家を過大評価するんだというご意見ですね。…

網野 江戸時代の普通の人たち、庶民の力量は、西尾さんたちが考えているよりもはるかに高かったと思います。ですから、あちらも相当程度「自虐史観」ではないかと皮肉を言いたくなったわけですけれどね。明治維新、近代の日本を江戸時代に対してあれほど明るく評価していることも含めて、自由主義史観はむしろ根本的には戦後の左翼の歴史像ともオーバーラップしてくるところがあると思います。(p221)