トレルチ

ピューリタン』大木英夫

 十九世紀末から二十世紀初頭に活躍したドイツの神学者・哲学者・思想史家エルンスト・トレルチは、ブルクハルト的近代史の見方に対するアンチテーゼを打ち出した。その主張を含んだ主要諸論文は、内田芳明氏の訳で出版され(『ルネサンス宗教改革岩波文庫版)、今日われわれが容易に読めるようになったのは幸いである。本書におけるトレルチの主張をかいつまんで言えば、ルネサンスよりも宗教改革の方が近代世界の形成に決定的な役割を果たしたということである。ルネサンスはたしかにカトリック教会内で繁栄することができたのであり、教会に対する批判や反撥にもかかわらず、結局は中世カトリック体制の中に吸収される性質のものであった。そしてそのようなものである限り中世カトリック教会の教皇支配体制を克服する勢力たりえなかったというのである。(p06)