世俗化された神学的概念

『概論 ルソーの政治思想』土橋貴

 ところでシュミットは、『政治神学』で、「近代国家学の重要な概念はすべて世俗化された神学的概念である」と述べていたが、先述した厳格なカルヴァン主義者であったともいわれる一七世紀のアングリカンチャーチストのホッブズは、『リヴァイアサン』で、神学政治を「政治化」(「神学的言説」の「政治的言説」への変換)する形で、次のように政治神学化していった。〈神の恩寵による彼岸でのキリスト者の魂の救済〉から〈リヴァイアサン(主権者)による此の世での生命の救済〉へ。神中心の時代であった中世が崩壊し、人間中心の時代である近代初期になると、神の位置を世俗の君主が占めるが、やがて近代も中頃になると平民がその位置を占めるようになった。それは、一八世紀のルソーが、ホッブズの〈リヴァイアサンによるこの世での生命の救済〉を〈民衆の一般意志を通した自由の実現〉に変換したことで分かろう。(p06)