習近平「ウイグル弾圧」はジェノサイドだ

『THEMIS 2019年2月号』

 これが少数民族抹殺の実態だ
 習近平ウイグル弾圧」はジェノサイドだ

 ウイグル人男性は強制収容所へ、女性はレイプされ、臓器は中国人に売買される


 「ホロコースト」を超える大虐殺
 「数十万、あるいは数百万とみられる人たちが、再教育施設に移され、政治教育を強いられている。宗教的な信条が脅かされている」
 昨年7月26日、米国副大統領のマイク・ペンスがワシントンで行った講演で、中国西北部新疆ウイグル自治区での少数民族弾圧を非難した一節である。「再教育施設」といえば聞こえがいいが、実態は「強制収容所」にほかならない。中国共産党の目的はジェノサイド(民族抹殺)だ。
 中国外務省の陸慷(ルーカン)報道官は今年1月7日の会見で、国連によるウイグル査察の受け入れを表明した。だが、「いま中国共産党が行っていることは、第二次世界大戦中のナチスドイツのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を超えている」というウイグル人の訴えは、世界に届きそうにない。
 国際問題に詳しい評論家がいう。
 「査察団は国連常任理事国・中国の息のかかったメンバーで固められる。そして、中国共産党が偽装した施設に査察に入る。秘密保持契約書にサインさせられた収容者は、破れば殺される運命にあることが明白だから、実態を伝えることができない」
 中国共産党は「祖国の統一」というスローガンを好むが、これは裏返せば、いまなお中華人民共和国の一員として「統一」されていない地域や民族集団が相当数存在することを意味する。なかでも20世紀半ば以降にやっと中国統治下に組み込まれた、内モンゴルチベットウイグルの3少数民族自治区の問題は深刻だ。…
 かつてモンゴル族は66’年に始まる文化大革命で大量虐殺の上、自治権が完全に剥奪された。当時の内モンゴルのモンゴル人の人口約150万人のうち、34万6千人が逮捕、2万7千900人が殺害され、12万人が暴力を受けて障害者にされたという。
 在日モンゴル族男性のジリガラ氏は「われわれは長年にわたって圧迫、投獄、殺害、洗脳されてきた。恐怖政治により漢民族中心の『中華思想』に侵食され、今では大半の同胞が民族意識をなくしてしまった」という。前出の評論家は「手段の一つはまずは足を折り、次に手を折って抵抗できないようにさせ、片目を潰す。そのうえでもう片方の目に蝋燭の火を近づけて思想を変えさせる」と語る。

 チベット焼身自殺で抗議へ

 チベット仏教を信仰するチベット族、トルコや中央アジアとの結びつきがありイスラム教を信仰するウイグル族は、民族意識が強い。
 チベットでは08’年に大規模な騒乱が発生。200人以上の犠牲者を出して鎮圧されて以降、中国の統治に抗議して160人以上が焼身自殺した。「漢民族が尼さんをレイプする事件も多発している」(チベット族男性)という。
 習近平政権によるウイグル弾圧はより凄惨だ。古代中国のシルクロードの中間点にあるこの地を、中央アジアの交通の要衝として「一帯一路」の重要拠点に据えているからである。
 在日ウイグル族女性のグリスタン・エズズ氏はこういう。
 「2年近く前、弟が二十歳のときパーティに出掛け、友人と共に強制収容所に連行された。昨年9月から年末にかけて、ウルムチ駅に乗り入れる電車チケットの一般販売が停止になり、20~30代の若者250万人が中国内陸部に移送されたが、その中に弟がいるかどうかもわからない」
 連行対象となる"罪状"は、「男性が髭を伸ばした」「女性がスカーフを巻いた」「モスクに行ったことがある」などイスラム教弾圧から、「役人に挨拶しない」「ネットで動画を見た」など他愛もない行動まで、42種類あるという。要は、地元警察にはノルマがあり、「ウイグル族であることが罪」として何とでも理由をつけて収容所送りにするのだ。
 「中国当局ウイグル族を収容所に連行するときに激しく抵抗されると、その場で殺す。年間20万人の子どもが拉致または殺害されているという報告もある」(前出・評論家)
 中国共産党ウイグルを核実験場にしてきたが、現在はAI実験場になっている。治安維持を名目に中国全土に監視カメラを投入し、顔認証システムで至る所を監視下に置くプログラムを15’年に立ち上げたが、ウイグルほど徹底された地域は他にない。3年前に一時帰郷したウイグル人男性は、「一つの信号に6~8台の監視カメラがいろんな角度で設置され、夜は車が通る度にフラッシュが光った」と証言する。

 空港に「移植臓器搬送」通路が

 約半年前にウイグル渡航した日本人男性は「バザールで見掛けた男性はほとんどが漢民族で、畑仕事をしていたのは大半が女性だった」と語る。それだけ多くのウイグル族男性が連行されてしまったのだ。
 近頃は女性も次々と収容所に送られているとみられる。昨年末、ウイグル人の幼い子どもが凍死している写真がSNSで広まった。ウイグルでは昼間でも気温が氷点下10度を下回るが、両親とも収容所送りにされ行き場を失い野宿していたのだ。
 収容所内では「習近平崇拝」など思想改造は当たり前だが、数少ない収容所からの生還者の証言は想像を絶する。薬を飲まされ、体調悪化の症状を記録される。女性はレイプされるが、薬の影響で生理が止まるケースも多い。窮屈な部屋に30~40人が押し込められる。鎖で手足を縛られて毎日拷問を受け、毎週少なくとも3~4人が死亡しているという。
 カシュガル空港には、「人体器官運輸通道」と表記された通路がある。これは移植用臓器の緊急搬送通路だ。収容所では、血液やDNA、眼球の虹彩などの生体データが収集される。17’年からは自治区の収容所外でも無料の健康診断を強いられ、同様の生体データ収集が行われている。米国のような移植大国ですら適合臓器の平均待機期間は肝臓なら2年、腎臓なら3年なのに、中国では2~3週間である。
 前出のグリスタン氏は、「この地球上からウイグル民族がいなくなったら、次は見て見ぬふりをしていた人たちの番だ」と涙を流した。
 日本は経済優先で中国に対して非難の声を上げない人たちが多い。自衛隊を認める憲法改正にも反対が多い。平和と生命を守るために何をすべきかが喫緊の課題だ。(p32)