陸戦と海戦の戦闘方法の違い

『陸と海 世界史的な考察』カール・シュミット

 陸地での戦争については、ヨーロッパ大陸の諸国は十六世紀以降に、特定の形式を作りだしてきたが、その根底にあるのは、戦争というものは、国家と国家の一つの関係であるという考え方だった。陸戦においては、対立する二つの国家のどちらにも、国家的に組織された武力があり、軍隊が開かれた戦場において雌雄を決する。たがいに敵とみなすのは、戦闘を行う軍隊だけであり、戦闘に参加しない住民は、敵対関係の外部にあるものとみなされる。住民は戦闘に参加しないかぎり、敵ではないし、敵としては扱われない。
 しかし海戦の根底にある考え方は、敵側の貿易と経済に打撃を与えなければならないというものだ。海戦で敵とみなされるのは、戦闘に参加している人々だけではない。敵国のすべての国民が敵であり、敵国と通商していて、経済的な関係を結んでいる中立国もまた敵である。
 陸戦では、開かれた場所での野戦で勝敗が決せられる傾向がある。海戦でももちろん海上での戦闘も行われるが、海戦の典型的な戦闘手段と戦闘方法はむしろ、敵国の海岸を封鎖し、砲撃することであり、敵国や中立国の商戦を、捕獲権に基づいて拿捕することである。このような典型的な海戦方法の本質は、戦闘員だけではなく、非戦闘員に対しても戦が行われることをその基礎としている。とくに兵糧攻めの場合には、封鎖された地域のすべての住民が、軍人であるか一般市民であるか、男性であるか女性であるか、老人であるか子供であるかを問わず、攻撃の対象になるのである。(p210)