明るかった中世

『『パル判決書』の真実』渡部昇一

 中世は暗黒時代だとされるが、しかし実際には、古代ギリシャ文明、古代ローマ文明で基礎となった奴隷制度は中世千年のあいだに消滅し、一方でヨーロッパ中に大学ができた。そして女性や敵を思いやる騎士道も生じた。ある意味ではヨーロッパらしいヨーロッパをつくった時代である。暗いどころか、明るかったと私は思うのだが、この中世を完全に無視したのが、宗教改革カトリックに反対したプロテスタントだったのである。ピューリタンプロテスタントのなかでもラディカルな一派である。
 ピューリタンは、愛の神の書といわれる『新約聖書』よりも復讐の神が出てくるといわれる『旧約聖書』を重視し、また古代ギリシャ古代ローマを学び、ギリシャ・ローマの古典的な知識を尊ぼうとする傾向がある。だから、彼らは裁判所を建てるときでも、市の公会堂を建てるときでも、ギリシャ式、ローマ式を選び、中世のゴシック式は採用しない。
 また、奴隷制度を廃止した中世が抜けているので、古代ギリシャ古代ローマに存在した奴隷制度が新しいスタイルでアメリカに復活したし、中世独特の騎士道精神も抜けてしまったのだと私は理解している。(p24)