社会主義思想の秘められた淵源

アメリ自由主義の伝統』ルイス・ハーツ 講談社学術文庫

 しかし、問題ははるかに広汎である。というのは、ロックをもって始まり、そしてそのことによってロックを変容させる社会というものは、ロックに対して寄せる絶対的かつ非合理的な愛着のゆえに、ロックとともにとどまり、また、自らの初期の時代に封建制度の遺産についてなじみがなかったのと同様に、後の時代においても社会主義の挑戦に対して無関心となるからである。その社会は、内部にいわば自由主義的理念の普遍性を保証する、一種の自己完結的なメカニズムを備えているのである。後にわれわれが見るように、ここに、マルクスが歴史的分析を誤った問題箇所の一つがある。彼は、社会主義イデオロギーの出現を経済的諸力の客観的運動に起因させているが、実際には、社会主義は、概して、階級の諸原理と、それに対する革命的な自由主義の抵抗という、いずれも古いヨーロッパの秩序が鼓吹した二つのものから生じたイデオロギー現象だったのである。封建制度の伝統を欠くという特異性を持ったアメリカが、社会主義の伝統を欠くという特異性をも持つにいたったのは、偶然のことではない。ヨーロッパのいずれの地であれ、社会主義思想の秘められた淵源は、封建的気質のうちに見出される。アンシャン・レジームがルソーを活気づけたのであり、そしてその双方がマルクスを活気づけたのである。(p21)