ナチスの税金革命② 大企業には大増税

ナチスの発明』武田知弘

 大企業には大増税

 ナチスは、労働者、農民に対しては減税する一方、大企業に対しては増税を行なっている。
 その最たるものは、配当制限法である。
 これは、1934年に導入されたもので、おおよそ次のような制度である。

 ・企業は6パーセント以上の配当をしてはならない
 ・6パーセントを越える剰余金は国営銀行に預けて4年間は引き出せないようにする
 ・国営銀行に預けられた企業の剰余金は、貧困者救済資金、建築資金に充てられる

 軍需産業を除き、配当が6パーセントを越えるような企業はほとんどなかった。したがってこの法律の対象はほぼ軍需企業に限られていたと考えられる。他の国では軍需企業が政治家と結託し暴利をむさぼっていたことを考えると、これは画期的なことだと言える。
 ヒトラーは第二次大戦がはじまるときには「この戦争で儲ける者があってはならない」と言ったという。
 ナチスは特定の企業のボロ儲けを許さずに、利潤を吐き出させていたのである。
 また1935年の8月には、法人税が30パーセントに引き上げられている。それまで、ドイツでは所得税最高税率は50パーセントだったが、それに比べて法人税は20パーセントだった。個人と会社間の税負担率が不公平だとして、そのため法人税が引き上げられたのだ。
 また外貨の暴落で利潤を得た企業はその利潤のすべてを徴収された。為替相場などで利潤を得るマネーゲームは今日でも社会問題になっているが、ナチスはそれを許さず、純粋な労働を伴わない利益は、すべて取り上げたのである。

 画期的な税金制度

 ナチスは、自動車の取得者に対して減税を行い自動車を購入しやすくする一方で、ガソリンに税金をかけ、道路建設の財源に充てていた。
 ガソリン税は、日本でも道路建設に充てる名目で、田中角栄によって導入された。このモデルは、ナチス・ドイツにあったわけだ。
 住宅を建築した人の税金も減税されている。これは住宅建設を促進するために、新たに住宅を作る人の所得税を減税したのである。現在、日本には住宅取得者減税制度があるが、これも大元はナチス・ドイツなのである。
 企業や農家が設備投資をした場合にも税金を減額している。
 これは設備投資を促進させるためのもので、現在の日本でも採用されている減税方法である。
 また税金の「源泉徴収」をはじめたのもナチス・ドイツである。
 税金を徴収する際に、各個人が税務署に納税しに行ったのでは、個人にとっても、税務署にとっても手間が大きい。そのため企業があらかじめ労働者の税金を天引きしておく、という制度を作ったのだ。
 戦時中の日本も、ナチスにならって、源泉徴収制度を導入した。その制度が今に至るまで生きつづけているのだ。(p130)