政治的リベラリズムの限界

『岩波講座 憲法1 立憲主義の哲学的問題地平』井上達夫

 共和主義ルネッサンス立憲主義の死か再生か  駒村圭吾

 周知のとおり、初期ロールズによって切り開かれたリベラリズムは、正(right)と善(good)の区別に基づく価値世界の構造化と調停不能な善の諸構想が対立・競合する多元社会の現実を前提として、特定の善き生に依拠せずに、つまり普遍主義的に、正当化される正義(justice)を秩序構想の基底的原理とおき、あらゆる公共化要求を正義の裁断にかける政治哲学として広まった。このような基本発想に立つリベラリズムは、あらゆる善の追求にとってその可能条件を構成する基本善(primary goods)にのみ公共化要求を認めるが、他面、特定の善き生の構想(conceptions of the good)には公共化資格を認めず、私的領域で追求されるべきものとする。ロールズ自身は後に上記のようなリベラリズムの哲学的な正当化から距離をおくが、それまですでに広く西洋諸国で受容されていたリベラルな諸要求は初期ロールズの正義論とその帰依者たちによって哲学的正統性を保証されることとなった。(p127)