構造的反米派の右翼性

『帝国以後』エマニュエル・トッド

 構造的反米派は、アメリカは本性からして悪質なのであり、資本主義システムの悪しき作用の国家的体現に他ならないという、いつもながらの解答を寄せる。フィデル・カストロのような小振りの地域的専制君主を崇拝するにせよしないにせよ、計画経済の失敗が最終的に確定したことを理解したにせよしていないにせよ、彼ら永遠の反米派にとって現在この時点は、まさに我が意を得たりという瞬間である。なにしろついに、アメリカ合衆国が全世界の均衡と幸福にネガティヴな貢献をしていることを真顔で指摘することができるようになったのだから。しかし勘違いしてはならない。こうした構造的反米派の現実と時間に対する関係は、止まった時計のそれに等しい。止まった時計でも、一日に二度は時刻が合うものなのだ。彼らの中で最も典型的なのは、実はアメリカ人である。ノーム・チョムスキーの著作を読んでみるといい。世界の変化についての自覚はいささかも見受けられないだろう。ソ連の脅威の以前であろうと以後であろうと、アメリカは変わることがなく、同じように軍国主義で、抑圧者で、自由主義を装っているだけだ。今日イラクにおいても、四半世紀前ヴェトナムにおいても同じである。しかしチョムスキーの描き出すアメリカは、悪質であるだけでなく、全能である。
 もう少し文化的で現代的な部類からはベンジャミン・バーバー〔ラトガーズ大学政治学教授、ウォルト・ホイットマン・センター所長〕の『ジハード 対 マックワールド』を取り上げることができる。彼はわれわれに、アメリカの軽蔑すべき下位文化と、それに劣らず耐え難い部族制の残滓の対決によって荒廃した世界の絵巻を描き出してみせる。しかしアメリカ化の勝利を予告しているところを見ると、ベンジャミン・バーバーは、その批判的姿勢の奥底で、十分に自覚しないままに、アメリカ・ナショナリズムの徒であることがうかがえる。彼も自国の力を過大評価しているのである。(p25)