荒廃

『帝国を壊すために』アルンダティ・ロイ

 まるでわたしたちは麻酔にかかったように、世界中のテレビの前で「不朽の自由作戦」の展開を見つめている。世界の超大国が束になってアフガニスタンに襲いかかる、世界でもっとも貧しく荒廃して、戦争で引き裂かれた国に。タリバン支配政府が、九月一一日の攻撃の責任を問われているオサーマ・ビン・ラーディンを匿っている国。アフガニスタンでいまだに取り立て可能な財産は、市民の命ぐらいだろう。(そのうち、五〇万人が身体に障害を負わされた孤児たち。交通の不便な遠隔の村に空から義手や義足が投下されると、人々が不自由な足をひきずって殺到するという。)
 アフガニスタンの経済は壊滅状態。事実、侵略軍にとって頭の痛いことは、アフガニスタンには地図上で特定し得るような通常の建物や標識が存在しないことだ。軍事基地もなければ、工業団地も水処理場もない。農地も巨大な共同墓地になった。山村地帯は地雷だらけ――最近の推定では一千万個が埋まっているという。アメリカ軍もまず地雷を片付け、道路を作ってから兵士たちを入れなくてはならない。
 アメリカの攻撃を恐れて、一〇〇万の市民が故郷を逃れ、パキスタンとの国境地帯に到着した。国連の推定では、緊急援助を必要とするアフガン市民の数は七五〇万。供給が途絶え――食糧援助団体も避難してしまったので――近年最悪の人道災害のひとつが起きはじめている、とBBCは報道している。新しい世紀の「無限の正義」がここにある。一般市民が飢えながら、殺されるのを待っているのだ。
 アメリカでは、「アフガニスタン石器時代に戻すまで爆撃する」とか、乱暴なことが言われているらしい。誰か、アフガニスタンはもうその状態であることを、どうかニュースで言ってくれないですか。それだけじゃご不満とおっしゃるなら、そうなるのには、アメリカさんご自身が大変な貢献をしたのだ、とついでに自画自賛してくださってもかまいませんから。ところでアメリカの方々は、アフガニスタンが正確にどこにあるか、皆さんの知識は少々あやしいかもしれませんね(アフガニスタンの地図が飛ぶように売れているらしい)。でもですね、合州国政府とアフガニスタンは、実はとても古くからの友だちなのですよ。(p10)