最初の民主主義

『帝国を壊すために』アルンダティ・ロイ

 イラク戦争が開始される前、復興人道支援室(ORHA)からペンタゴンあてに、保護すべき一六の重要施設のリストが送られていた。国立博物館はそのリストの二番目。にもかかわらず、博物館は略奪にあったばかりか、汚されてしまったのだ。そこには古代からの文化遺産が収められていた。今日私たちがイラクとして知っている地域は、メソポタミア渓谷の一部である。チグリス河とユーフラテス河の流域に発展した文明は、世界最初の文字、世界最初のカレンダー、世界最初の図書館、世界最初の都市、そしてそう、世界最初の民主主義を生んだのだ。バビロンのハムラビ王が、市民の社会生活を支配する法を初めて作った。この法典の下では、すてられた女も、売春婦も、奴隷も、そして動物でさえも権利を保障されていた。ハムラビ法典こそは、司法の誕生というだけでなく、社会正義の概念を初めて理解したもの、と認知されている。アメリカ合州国が違法な戦争を仕掛け、正義をグロテスクなまでに愚弄する蛮行を犯すのに、これ以上不適切な土地はなかったのだ。(p183)