社会規範

南原繁の思想世界』加藤節

 例えば、南原自身が「個人主義を徹底して、近世自由主義を確立した」と評したロックはその典型であった。ロックは、人間を自由かつ平等で、かつ自律した個人としてとらえた。しかし、ロックのその個人は、自己完結的に自足する存在ではなく、「社会を……享受させるために」神が「知性と言語」を与えた存在、その意味で「社会」が「精神のなかに実在している」社会的存在にほかならなかった。そして、周知のように、ロックの人間は、その社会性に支えられて、「生命、健康、自由、資産」への「固有権 property」を確実に保全するために統治関係を含む政治社会を形成するとされたのである。(p30)


 ロックのこの例が示すように、「個人主義」的世界観がすべて「社会共同体固有の規範」の否定に直結しているわけではなく、その点で南原の「個人主義」批判はいささか行き過ぎであるといわなければならない。(p31)