米英の悪しき企み

『我は苦難の道を行く 汪兆銘の真実 下巻』上坂冬子

 米英の悪しき企み

 汪兆銘はただちに十二月八日付で、概略次のような「大東亜戦争に関する声明」を発表した。

 ……米英両国は百年以来の経済侵略を維持するために、中国を永久に半植民地とすべくあらゆる手段をもって和平を破壊し阻害してきた。彼らはその武器や物資を餌として重慶側に抗日戦争を継続させつつ中国を枯渇させ、日本を疲弊させて漁夫の利を得ようとしている。
 最近は、さらに我が国および我が友邦の生存を妨害すべく、公然と経済封鎖を実施しはじめている。日本はこれに対して、事態挽回を願って使節アメリカに派遣し交渉を進めていたが、アメリカは反省の色をみせず一層その態度を硬化した。イギリスもそれに追随して悪人の悪事を助長し、かくて日本と米英の間に戦火が勃発した。
 国民政府としては日本とのこれまでの条約を重んじ、アジア新秩序の建設という共同目的達成のために日本と苦楽をともにし、不抜の精神でこの難局に臨みたいと思う。
 戦争勃発により、わが国の困難はさらにきびしくなるだろう。これはひとえに米英の悪しき企みにより、重慶が利用されて国家を犠牲にしてもかまわぬと判断した結果である。
 我々は、かつての辛亥革命の精神にもとづいて孫文の大アジア主義を遂行し、和平、反共、建国の使命を全うすべきである。勝敗は、すべてこの一挙にかかっていることを認識し、ともに励まし合って前進しようではないか。

 日米開戦翌日、蒋介石は対日宣戦布告をした。こうなるともはや「一面抵抗 一面交渉」は遠き日のたわごとである。(p36)