悪魔を信じる

ファンタジーランド(上)』カート・アンダーセン

 アメリカ人は、ほかの先進国に暮らす10億~20億の人々よりもはるかに強く、超自然現象や奇跡、この世における悪魔の存在を信じている。最近天国に行ったとか、天国から戻ってきたという話や、数千年前に生命が一瞬にして創造されたという数千年前の物語を心から信じている。(p05)


 だが、アメリカを創建した敬虔なキリスト教徒にとって、地獄に住む悪魔は、単なる来世の問題ではなく、現実の問題でもあった。悪魔は現に、神の王国の建設という喜ばしい幻想を追い求めている彼らを苦しめていた。マサチューセッツに新たな植民地が設立される以前から、あるピューリタン聖職者はこう警告している。「アメリカは明らかに、私たちが知る世界のどの場所よりも、サタン(魔王)に支配されている」。そうなのだろうか? だが、同じような主張をしているピューリタン指導者はほかにもいる。その説明によれば、キリスト教はそれまでの1500年間にヨーロッパ中に広まり、すでに浸透してしまっている。そこで悪魔はある時点で、アジアの異教徒に太平洋を渡らせ、アメリカに向かわせたという。「悪魔は、アメリカに自分の王国を作れば、主イエス・キリストの福音に脅かされることもないだろうと踏んで、あの哀れな野蛮人どもをこの地におびき寄せたのだ」。つまり、アメリカの先住民は、単に異教徒というだけでなく、サタンの兵士なのだ。彼らは現在、種族ごとに暮らし、対立し合っているが、いずれは団結して入植者を全滅させるに違いない。(p63)


ファンタジーランド(下)』カート・アンダーセン

 悪魔との闘争

 悪魔との組織的な闘いを意味する「霊的闘争」という概念は古くからあるが、アメリカではしばらく姿を消していた。ところが1960年代に復活すると、1980年代から90年代にかけて大きく発展し、今ではアメリカのキリスト教の陰の側面として、広範囲に影響を及ぼしている。これを主張しているのは、何かにつけて怒りをあらわにする福音派やカリスマ派だ。サタンを声高に攻撃する彼らの祈りは「激烈なとりなし」と呼ばれる。
 彼らは、「悪魔に取りつかれた」人々がイエスに癒やされたという四福音書の物語を重視する。その中では、視覚や発話能力、正気を失った人々が、のろわれた者と見なされている(ヨハネも述べているように、一般大衆にはイエスのほうが悪魔に取りつかれているように見えたらしいが)。そのため、身近なレベルの霊的闘争では、家族や友人・知人に取りついた悪魔を追い払おうとする。アメリカでは現在、数千人もの聖職者および彼らが率いる数百万人もの信徒が、苦しんでいる人々から悪魔を追い払おうと祈り、叫び、詠唱している。ピュー・リサーチセンターの調査によれば、大人の9人に一人、すなわち2500万人から3000万人に及ぶアメリカ人が、「悪魔や悪霊が人の体から抜けていくのを体験・目撃したことがある」という。(p91)