対照

『もう一つの戦後史』江藤淳

 この番組には、談話を求められて、私も短時間顔を出していたが、放送の当日防衛庁戦史室の場面を見ているうちに、そこに集まった旧陸軍軍人の舌鋒の鋭さと旧海軍側の沈黙との対照のはなはだしさに、私は強い印象を受けた。なかでも稲田元陸軍中将の炯々たる眼光と、言葉の端々から奔出する激しい感情には、ほとんどショックを受けたといってもよかった。とにかく、一度、陸軍側の話をよく聴いてみなければならないと、心に決めたのはそのときである。(p69)