印象操作で歪められるプーチンの実像

ウクライナ紛争 歴史は繰り返す』馬渕睦夫

 ここで時間的には遡りますが、ミンスク合意後のネオコンによるプーチン攻撃の流れを見ておきます。現在の状況を彷彿させる内容です。プーチンを世界の悪者に仕立て上げる様々な印象操作が激化しました。
 2015年のミンスク合意の2週間後、ボリス・ネムツォフというロシアの元第一副首相(エリツィン政権時代)がクレムリンの近郊で暗殺されています。この時、西側のメディアは大統領選のライバルを消すための、プーチンによる暗殺であると報じました。ところが、ネムツォフは泡沫政治家で、支持率は1%程度。到底プーチンのライバルにはなり得ません。
 そういう人物を暗殺し、プーチンの仕業であるという情報を流布して、「プーチンは非情で、冷酷な人間である」という印象操作を仕掛けたのです。
 もう1つ、暗殺場所がクレムリン近郊ということは、プーチンをいつでも暗殺できるという意思表示でもあったのです。それを察知したプーチンは約2週間、雲隠れし、次に登場したのがテレビ演説の場でした。そこで、プーチンは「ロシア軍の核兵器を臨戦態勢に置くべきかどうか、検討を命じた」と話しました。この発言を受け、日本をはじめ世界では「プーチンはとんでもない。核兵器を弄ぶとは」と一斉に非難の声が上がり、当時の広島・長崎市長は抗議文まで出しています。
 さらに、最近の典型的なデマ報道は、2020年の反体制派ナワリヌイ毒殺未遂事件です。プーチンが本気で殺そうと思ったのであれば、未遂で終わるはずはありません。しかもナワリヌイはロシアの病院で治療を受けており、ドイツの病院への転院まで認められ、その後ロシアへの帰国も認められているのです。帰国後逮捕されましたが、どうしてナワリヌイは「毒殺」の危険があるロシアへわざわざ戻ったのでしょうか。
 今回のウクライナ侵攻においても、プーチンは病気のために精神異常になって気が狂っているのではないか、クーデターの可能性があるのではないか、軍部が反乱してプーチンを捕まえ、軍事裁判にかけるのではないか……。
 そんな情報ばかりが氾濫しています。ネオコン側による情報操作と言えますが、わが国を含め世界の多くの人たちはそれらの情報に惑わされています。しかし、これまで述べたネオコンによるプーチン潰しの事実を見据えれば、プーチンを不当に貶める印象操作であることが容易に理解できるはずです。(p35)