東京裁判に出廷して<虐殺>を否定した軍人たち

『再審「南京大虐殺」』竹本忠雄 大原康男

 次に日本軍人の証言を見てみよう。まず、東京裁判では、塚本浩次・上海派遣軍法務官、中山寧人・中支那方面軍参謀(情報担当)、中澤三夫第十六師団参謀長、飯沼守上海派遣軍参謀長、榊原主計・上海派遣軍参謀などが証人として出廷している(肩書きは南京戦当時)。
 彼らの証言の一部を抜き書きすると、塚本法務官は、「南京入城後、日本兵による不法事件があり取り調べたことを記憶している。……私の処断した事件の中に将校は四、五人いたと思うが、その他は兵卒による散発的な事件が大部分であった。罪種は主として掠奪、強姦であり、傷害、窃盗は少なく、それに起因する致死は極めて少なかったと記憶している。殺人も二、三件あったと思うが放火犯を処断した記憶はなく、また集団的虐殺犯は取り扱ったこともない」と証言した。
 中山寧人参謀は「世に謂う南京事件なるものは、私が既に中支那方面軍の参謀を辞めてからずっと後に世間に噂されたものであるが、……私は南京に数回行ったが、世に言われるような大事件は、当時聞かなかったし、また見たこともない。……南京入城後、市内巡察の際見た二箇所の死体はいずれも軍人の死体であり、南京の城内でも城外でも、民間人の死体は見たことがない」と証言している。
 また、中澤三夫参謀長は、「日本軍人による物資取得の事実は、憲兵から少数の通報を受けた。しかし、住民の逃亡とともに資材もほとんど搬出されており、家屋も空家同様のものが多かった。従って組織的、集団的に掠奪したという事実は全く聞知しないし、勿論司令部として、かかる不法行為を命令し、黙認し、許容した事実は、全くない。中国の戦場における掠奪、破壊は大部分が、退却する支那軍に続いて挺身闖入する窮民の常套手段である、ということを私は掠奪の被害者である支那人から直接聞いている。……南京で日本軍によって計画的な強姦が行われたという事実は、全くない。少数の散発的な風紀犯はあったが、それらはすべて法に従って処罰されたことを承知している」と証言している。
 これに限らず、今日も生存している南京戦の参戦者の多くは<大虐殺>など見たことがないと述べている。軍人の証言はこの他にも多数記録されているが、ここで東京裁判における証言だけをとりあげたのは、これらの証言は本人が法廷に出廷し、宣誓した上で証言し、なおかつそれに対して検察官による反対尋問が行われたからである。それに対して中国人の証言がどうであったかは既に述べた通りで、<反対尋問>さえ、ほとんど行われていないのである。(p105)